IN TO THE DARK

雨の中、傘もささずに
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俺は雨の中、町田街道を走っていた。

雨粒が当たりを頬を刺激する。だが、脳髄まで響かない。心に渦巻く不安が痛覚を遮断しているのだ。


「…嘘だろ?誰か嘘だと言ってくれ。」

思わず口を滑りだす言葉
脳内でこれが現実である事を否定する。これは、まだ夢の中で起きるとまた同じ日々がやってくるのだと…

…だが誰も否定する者はいない

『アツが…死んだんだ』

脳内で松戸の声が何度もリフレインする。その都度、心が否定する。だが、それは土砂降りの下品な雨音によってかきけされていった



びしょ濡れのまま、病院の前に立つ。ゆっくりと開くオートドア。 俺は待ちきれず、その隙間に無理矢理体をねじこみ、院内へと滑り込む。

「比呂ぉ…」

俺の名を呼ぶ今にも消え去りそうな声…アツムの妹“理名”だ

松戸に支えられながら、必死に立っている。支えが無ければきっと一人では立てないのだろう。


「…アツは?」

松戸が静かに首を振る。


誰か嘘だと言ってくれ
誰か偽りだと証明してくれ

胸の奥で暗幕が降りてゆく様な感覚を覚えた…



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