IN TO THE DARK

ドッペルゲンガー
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「…とそんな事があってな」

俺は松戸の住むマンションの一室で 体現した話をしていた

聞き手の松戸は興味なさげに 50インチ程のテレビのブラウン管に虚(うつ)ろな視線をただよわせていた


松戸の住むマンションは 都内某所にある一等地に建っている

確か親父さんが どこかの社長だか会長だかという噂を聞いた事があるが 定かではない

松戸本人が語ろうとしない為、その真偽はわからない

俺が言いたいのは
世の中は平等ではないということだ

「聞いてんのかよ?」

「…聞いてるよぉ…」

大きなアクビを一つした後、やっと俺の方へ向き直った


その後 松戸の口から出たのは思いもかけない言葉だった

あの歪んだ笑みを張り付けながら語り始めた

「どちらが本物なんだろうな」

…意味がわからない
何を言っているのだろうか

どちらが本物なのかだって?


「今、俺の目の前にいるオマエが本物だといえる確たる証拠はどこにある?」


証拠だと?
自らを証明できる証拠…?

運転免許証…?
健康保険証…?
学生証………?

良く良く考えてみれば それらは社会的存在を第三者へ認知させ、証明するものであって自分自身の存在を証明するものではない

俺が俺である事の証明…

過去の記憶…
そうだ。俺が歩んできた過去の産物を語る事ができたなら それは自身を証明する事にならないだろうか

意気揚々と言いかけた時
松戸に先手をとられた

「言っておくけど記憶なんか当てにはならないよ。ドッペルゲンガーってさ、一般的推測として生霊ではないかって説が有力だよね。…となると記憶なんて」


…共有できる…


一瞬、目の前の世界が歪んだ気がした

腰を落ち着けたフローリングの床がまるでウォーターベッドの様に不安定なものにすら感じる


俺が…今、ここにいる俺こそがドッペルゲンガーだとしたら…


冷房が効いている筈なのに背中には嫌な汗が どんどん滲み出してくる


今 ここにいる俺は俺では無く
本当の俺は…

脳内では情報を伝えるシナプスが廻り巻くっている

…だが 明確な答えがでてこない

徐々に自分の存在が世界から薄れゆく様な感覚さえ覚えてゆく



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