IN TO THE DARK

虚像から実像へ…
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「携帯鳴ってるよ。出なくていいの?」


運転席に座る松戸が嬉々とした表情で声をかけてくる

何がそんなに嬉しいのか

これでもか、というほどの笑顔

…今の俺に笑顔を返す余裕は無い


俺は、事の発端を思い返してみた

そうだ

俺は こいつに(無理矢理)連れられて都内の廃病院に行ったのだ
都内では有名な心霊スポットだ

朽ち果てた廃病院の手術室で俺と松戸は 薄汚れた一枚の紙を拾い持ち帰った

何故、そんなモノを持ち帰ったのかって?

理由は簡単だ

病院内でカルテや手術器具を拾い持ち帰ると…なんて話、一度は聞いた事はないかい?

その体験談で良く聞く話を実行に移してみたのだ

検証なんて大層なものじゃない

当時の俺は刺激に飢えていた
…いや、麻痺していたのかもしれない。
その頃の俺はありきたりの恐怖では怖さを感じなくなってしまっていたのだ
単に心霊スポットに行くだけでは飽きたらず、そこに潜む闇を引き摺(ず)りだす事に快感すら覚えていた時期だ
運が良かったのか悪かったのか…その快楽の為に打ってつけな人物がそばにいた。
今考えると、それが行動に拍車がかかった要因の一つだと思う

その男の名前は松戸

心霊やオカルトに関して他の追随を許さない程の知識と独特な世界観を持ったコイツは、俺に最高の快楽を与えてくれていた




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