二次創作

そろそろ
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「・・・秋ね。」

空を仰ぎながら、季節の変わりを感じる。

統一性の無い自由な雲達が覆う空。
紅葉が高く舞い踊る空。
手で掴めそうで掴めない、もどかしげな風を浴びて。


「そろそろ冬眠かしら。」


そう声が聞こえた方へ顔を向けると、空間に生まれた違和感が口を開いていた。そこから顔を覗かせるのは

「紫。」

紫を纏った妖怪だった。

「こんにちは、霊夢。」

よっこいしょ、とスキマから体を乗り出しこちらへ降りてきた。
スキマの中身は見えない。目では認識出来ないのだ。
なんだか、彼女の胡散臭さを物語っているようだった。

「冬眠にしては早いのではなくて?」

「今年は色々あったからねぇー」

毎年色々あるじゃない、と応えるも、それは聞こえなかったらしい。肩を回しながら、紫は続けた。

「そういうわけよ、私、明日から冬眠に入るから。」

「! 何よいきなり。」

「いきなりも何も、いつもそうだったじゃない。」

・・・思い返してみればそうだったかもしれない。
でも、何故か今年はいつもと違うのだ。なんというか、私の心の準備が整っていない。

「なぁによ暗い顔しちゃってー。私が居ないと寂しいの?」

思わず顔が紅くなる。なぜ?自分でも分からない。

「可愛いわね、霊夢ったら。」

鼓動が速くなる。スピードに身体が追いつかない。

「ば、馬鹿じゃないの!」

思わず出た言葉がそれだった。

紫は一瞬吃驚したような顔をしたが、またすぐにいつもの妖しい笑みを浮かべる。

「ふふ、からかってごめんなさいね。」

照れて俯いてしまった。
一秒でも長く見つめていたいのに。

「そろそろ御暇しようかしら。」

また、唐突に。
そうやって別れを告げるのだ。

「ねぇ、」

私は彼女に聞く。

「なぁに?」

実に清々しい顔で私を見返す紫。

「貴方が境界操作すれば、私の心の中も見えるのよね?」

「そうよ。」

「じゃあ、今すぐ私の中を透かしてよ。」

お願いだから。
今、私を支配しているこの言葉は口から言えないから。


少しの間。
静寂を割いたのは紫だった。

「ふふ、馬鹿ねぇ。そんな事したら面白くないでしょ?」

じゃあ、といって紫はスキマを出現させた。
行かないで!などと言えるはずもなく。

「おやすみ。」

口から吐いて出たのはその一言。
ろくな事も言えない、自分のボキャブラリーの無さに嫌気が差す。


「待ってるわよ。」


意味深な一言を返される。
意味は何となくわかる。

銀杏の葉が落ちた須臾、既に彼女は消えていた。

何しに来たんだか。




先程の言葉を反芻する。
溜息と、



「・・・・ずるい」



呟いて、私は石畳を後にした。

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