ましゅまろ短編集

2013年07月06日(土)
【視線】

例えば、風呂場で洗髪してるとき、ふと背後に視線を感じたりするだろう。あれは、本当は後ろからの視線じゃなくて、上から見られている時の視線らしい。
まあそもそも、幽霊なんか馬鹿馬鹿しくて信じてないのだから、そんなことはどちらでもいい話だ。問題はそこじゃない。

問題は、人間は視線というものを、一体どこから感じ取っているのだろうかという点だ。

目で?肌で?全身で?それとも……心で?

この体に突き刺さるような眼差しを、今、確かに感じるのだ。

ふと、一人の少年の存在に気づいた。
少年はこちらを見ている。

「君は……」俺を見ているのかと、問いかける途中で言葉を飲み込んだ。

少年が、こちらから向こうへと走り抜けて行ったからだ。彼の視線は向こうの景色へと向けられていたものに過ぎなかったのだ。

なんだ、早とちりか。そうか、そりゃあそうだよな。

「いるわけ、ないのにな……」
透明人間である自分を、見つめる人間なんて。











18:57
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