ましゅまろ短編集

2013年07月13日(土)
【かめ】

毛布を頭から被って、手足を縮めてまるくなっている。まるでかめみたいだと思った。

「それで、話ってなに?」
彼は有名な凄腕カウンセラー。とあるショックがきっかけで、才能が開花したらしい。

「あのぅ、相談がありまして……」僕は冴えない学生だ。「こんなこと言っても信じてもらえないかもしれませんが……僕は記憶喪失で……なにも、思い出せないのです……」

「信じるとも。思い出せる限りでいいから、何か話してくれないかな?」カウンセラーは言った。

そうは言われても、なにも思い出せないのだ。情報らしい情報といえば、僕の身体中に無数の傷があるくらい。

僕の困惑ぶりに気がついたようで、カウンセラーはぽつりと語りだした。

「僕も、学生時代に虐めにあっていたことがあってね、実に陰湿なものだったよ。特に辛かったのが、かめの刑といってね。大きな布袋に入れられて、手も足も出ないところを棒で叩かれるんだ。浦島太郎のかめのようだから、かめの刑ってね……」カウンセラーは笑った。

僕は黙って聞いていた。

「でも、その虐めをバネに今の自分がいるんだ。君にももうじき、わかるさ。まあ、焦らずゆっくり思い出せばいい……」

カウンセラーが、毛布の隙間から、傷だらけの腕を差し出してきた。僕のと似ている。そのまま無言で握手を交わして、僕はカウンセリングルームを後にした。






19:06
コメント(2)
[コメントを書く]


<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。




w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
++新着ブログ記事++