ましゅまろ短編集

2016年08月16日(火)
【無題】


 カーテンが開く度に思う。
 闇に潜む生き物が居るように、光に溶ける生き物達が、生まれたばかりの日だまりに集まっているのを感じる。一体どこから。
 温かな日だまりに漂っては、消えていく。時折、小さな埃が舞い上がり、光と戯れる彼らの姿を、頼りなく目視させてくれるのを、私もまた日だまりの中で、ぼんやりと見つめている。
 不意にカーテンが閉ざされた。無理もない。夏の日差しは強いから。
 日だまりと共に消滅し、影になった彼らは、またカーテンが開かれるその時を、ただ大人しく待っている。
 愛しく、儚い。
 きっと、夏祭りの提灯の灯り。ラムネの瓶から零れた光の粒や、打ち上げ花火の欠片。重さに耐え兼ねた線香花火の先っぽ。すっかり液体になってしまったかき氷。
 いつかの夏休みが、まだそこで息を潜めているのを、私は確かに感じる。
 

06:03
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